スタッフブログ
老犬介護
近年、飼育環境、食事、医療技術の向上により、犬の平均寿命は14才を超えます。
平均寿命というのは、病気のため若齢で亡くなっている犬も含まれるので、実際の老犬はそれ以上、16才や18才という年齢のわんちゃんがたくさんいます。
その為、老犬の介護について悩まれている飼い主様も多いと思います。
今回は、病院によく来てくれている、柴犬のハナちゃん16才をご紹介します。
ハナちゃんは、家族がお仕事の間は病院で過ごします。
老犬ならではの症状や介護する際の工夫などをご紹介します。
歩行
病院は、フローリングのため滑りやすくなっています。そのため、介護用靴下を履いています。
起き上がるときには、この靴下がないと足も手もハの字に広がってしまい、立つ事ができません。
立てないとハナちゃんは大声を出してぐずります。体の自由がきかないことは、犬にとっても苦痛なのでしょう。
この靴下は、シリコン製で履きごごちがとてもよいので、一日中履かせていることができます。
外に出るときは脱がせているのですが、履いたままでも破れたりすることはありません。
ハナちゃんが帰ったあとは、水洗いして干しておきます。
食事の与え方
基本的には、手かスプーンで口元に持っていってあげます。
老犬は、手足の関節や背骨も固く柔軟性がなくなっているため、首を下げることやごはんのある所に首の角度を合わせるのが苦痛になっていることがあるためです。
お水は、いつでも飲めるように口の位置よりも少しだけ下になるような台の上にお皿をのせてあります。
一度手から与えてしまうと、次からなかなか自ら食べなくなることもあります。
しかし、老犬で介護が必要とするわんちゃんには、ある程度の覚悟の上、仕方のないことです。
食事内容
本来は、高齢犬用の質のよいドックフードが理想ではありますが、ハナちゃんは食欲の低下に伴い、食事の嗜好も変わってしまいました。
飼い主様と相談して、長期的な先のことよりも今の生活の質を向上できるよう、ドックフードとある程度の栄養素には気を使いながらの人間食の両方を食べています。
本日のごはんは、ご家族手作りの鶏肉とマグロを煮たもの、さつまいも、パン、卵焼きです。これに、病院スタッフがドックフードの缶詰やドライを混ぜて食べさせます。
今日は食べたけど明日は食べない。ドックフードは全く食べない。味をつけないと食べない。などたくさんの悩みがあると思います。
犬は、塩分をおいしいと感じる部分が多くあります。そのため、体には悪くても、味がついたものを好む傾向にあります。
それが老犬になってくるとさらに頑固になり、好まないものは全く見向きもしないという状況に陥ってしまいます。
だからと言って何でもよいとしてしまうと、近い将来に、かえって体調を悪化させ苦しめる可能性があるかもしれません。たとえば膵炎や胃腸障害、肝臓障害など。
ペットの体調を気遣えるのは飼い主様しかいません。獣医師や病院スタッフに相談しながら食事内容を考えていきましょう。
排泄
おしっこは、いろんなときにどこでもやってしまいます。病院は育った環境とは違うところであることと、体の自由が若い時よりきかないのでやってしまうのかもしれません。
ハナちゃんは男の子なので、男の子用のおむつを使用しています。中型犬用ですが、ハナちゃんは少し大きめなのでテープを継ぎ足してお腹に固定しています。
女の子はおむつになるのですが、やはりおむつをつけるとどうしてもおむつによるかぶれができてしまいます。
こまめに交換することと、なるべくおむつを付けなくて済む時間はつけない方がよいかもしれません。
ハナちゃんは耳がほとんど聞こえないので、名前を呼んでも気づきません。
眼は少し見えているので、人の存在を気づかせる時は、先に視界に入ることを心がけています。
ハナちゃんも私達に何か用事があるときには、眼で訴えてくれます。
1日の多くの時間を寝て過ごします。スタッフがよく使う場所の真ん中で寝ることが多く、やっぱり人が恋しいのかなあと思います。
年をとってくると、寝すぎるくらい寝ているように感じます。
犬は、ほとんどの時間を浅い眠りに使いますので、寝る時間は人間より多くなっているのですが、老犬になるとさらに寝る時間が増えます。
寝ている以外は、ぐるぐると処置室を同じ方向に向かって歩いています。これも老犬にある、目的のない行動かもしれません。
今回のハナちゃんよりもっと多くの介護を要するわんちゃんもいます。
寝たきりのわんちゃんや痴呆症のわんちゃんは、飼い主様のご苦労はさらに大変なものとなります。
最近では、老犬ホームや病院でも介護してくれたり、介護グッズを紹介してくれたりする場所があります。
ご家族で悩んでいたり、困っていたら一度相談するとよいと思います。
ハナちゃんは高齢でもありますが、肝臓に問題があり平成26年の春から闘病生活でもありました。
飼い主様と一緒にさまざまな山を乗り越えてきました。
そこで感じることは、飼い主様の深い愛情とほんとうに頭の下がる、涙も出てしまうほどのご苦労がありました。
そのおかげでどうにかお正月を迎えることができそうです。
人は、仕事もしなければならないし、自分の生活ももちろんあります。その中で、愛しているけれど、介護をやってあげられないと悩んでいませんか?
どこまでペットにやってあげられるかは、その飼い主様のやれる精いっぱいのことでよいのです。
人それぞれでやれる範囲は違いますが、ハナちゃんにはハナちゃんの飼い主様の精いっぱいの気持ちでハナちゃんは幸せに感じていると思いますし、もし、ハナちゃんよりいっぱいのことはできなくても、その飼い主様の精いっぱいの気持でそのペットは幸せです。